開催結果

TCFDサミットについて

  • 世界初となる「TCFDサミット」を東京で開催し、「環境と成長の好循環」のコンセプトの下、世界の産業界・金融界のリーダーが集結し、今後のTCFDの方向性を議論。
  • 我が国からは、投資家が企業の開示情報を評価する際の指針となる、「グリーン投資ガイダンス」を発表し、多くの賛同を得る。
  • また、TCFDサミット総括において、ダイベストメントからエンゲージメントへ、気候変動のリスクだけでなく機会の評価の重要性等のメッセージを発信。

登壇者集合写真
登壇者集合写真

TCFD SUMMIT 2019 会場風景
TCFD SUMMIT 2019 会場風景


TCFDサミット結果概要 ①

  • 経済産業大臣より、TCFD提言に関する我が国のこれまでの取組や情報開示の重要性について説明があり、イノベーションに向けた投資や気候変動対応をコストではなく競争力の源泉と捉えることの重要性についての認識が共有された。
  • イングランド銀行のマーク・カーニー総裁からは、包括的な気候関連情報の開示の重要性や、ネットゼロ社会の実現に向けた投資を主流化することの必要性等について述べられた。
Welcome Message 菅原 一秀(経済産業大臣)
Opening Remark マーク・カーニー(イングランド銀行総裁)
Opening Session
(TCFDサミットへの期待)
伊藤 邦雄(TCFDコンソーシアム会長、一橋大学大学院特任教授)
ピーター・バッカー(WBCSD 会長兼CEO)
メアリー・L・シャピロ(TCFD事務局アドバイザー)
水野 弘道(国連責任投資原則協会理事、年金積立金管理運用独立行政法人理事兼CIO)
進藤 孝生(日本製鉄株式会社 代表取締役会長、経団連副会長)
チャールズ・O・ホリデイ(ロイヤル・ダッチ・シェル 会長)

マーク・カーニー
マーク・カーニーイングランド銀行総裁

気候リスクとレジリエンス(強靱性)を金融の投資判断の中心に持ってくるためには、気候開示が包括的で、気候リスク管理が変容し、ネットゼロ世界に向けた投資が主流化しなければならない。(中略)今、開示は静的を超えて戦略的である必要。市場はどの企業が気候変動にレジリエントかを評価するための情報を必要としている。そのために、企業、銀行、保険会社、投資家は4つのことをしなければならない
①開示の量と質を高める
②投資判断に最も役立つ情報を決定するための開示手法を洗練する
③戦略的なレジリエンスを評価するための知識を普及する
④TCFDは現在のポートフォリオがネットゼロへの移行に向けて、どの程度準備ができているか開示する方法を検討すべき

 →最大のハードルの一つがESG測定におけるバリエーションの多さ
 →環境パフォーマンスを特定するための共通タクソノミーについて、EUタクソノミーやグリーンボンド基準は助けになるが、二進法的になる傾向。むしろ「50段階の色合いのグリーン」を示すようなタクソノミーが必要。

TCFDサミット結果概要 ②

  • オープニングセッション【TCFDサミットへの期待】では、 TCFDサミットにおける議論のシーンセッティングとして、共催者(TCFDコンソーシアム、WBCSD)、TCFD事務局、投資家、事業会社の登壇者より発言。
  • TCFDコンソーシアム会長の伊藤一橋大学大学院特任教授より、TCFDコンソーシアムが同日に公表した「グリーン投資の促進に向けた気候関連情報活用ガイダンス(グリーン投資ガイダンス)」について、主なポイントは、①エンゲージメントの促進②気候関連リスクと機会の把握及び評価③イノベーションの促進と適切な資金循環の仕組みの構築と説明。環境と経済の二項対立を乗り越えることの重要性を強調。
  • WBCSDのバッカー会長兼CEOより、企業はパリ協定とSDGs実現で重要な役割を担う一方、多くの分野の変革に金融システムの変革が欠かせないこと、企業と資本市場の対話を変える重要な触媒となるのがTCFD提言に基づく情報開示と発言。
  • シャピロTCFD事務局アドバイザーより、日本が世界をリードし、TCFD提言が財務情報開示の常識になることへの期待が述べられた。
伊藤邦雄伊藤邦雄 TCFDコンソーシアム会長、
一橋大学大学院特任教授
ピーター・バッカーピーター・バッカー
WBCSD会長兼CEO
メアリー・L・シャピロメアリー・L・シャピロ
TCFD事務局アドバイザー

TCFDサミット結果概要 ③

  • 水野PRI理事、GPIF理事兼CIOより、今年8月にGPIFはTCFD提言に則った報告を公表「ユニバーサル・オーナーであるGPIFのポートフォリオが2℃以内のシナリオに整合したとき、初めて世界は気温上昇2℃以内を達成できる」と考えている旨発言。
  • 進藤日本製鉄会長、経団連副会長より、日本鉄鋼連盟は昨年11月に長期温暖化対策ビジョン「ゼロ・カーボン・スチールへの挑戦」を発表する等取組を推進。環境と経済の好循環を実現するには、オポチュニティの評価が益々重要。ダイベストメント(投資撤退)の発想ではなく、目指すべき未来社会像の実現に向けた技術開発に投資が促進されるべきと発言。
  • シェルのホリディ会長より、エネルギーの転換を恐れてはならず、このピンチを新たな機会と捉えて行動するべき。シェルのシナリオでは転換までに48年かかるが、達成に向け、30年、50年時点のGHG排出目標を立て、3年毎の目標も経営陣全体で共有していると発言。
  • 欧州委員会のドンブロウスキス副委員長より、ビデオメッセージにて、2℃目標の達成には公的資金だけでなく民間資金を動員し、グリーン投資の規模を拡大していくことが必要であり、ファイナンス促進に向けたタクソノミー等の取組を推進しているとの紹介。また、「グリーン投資ガイダンス」の策定を含め日本の気候変動関連開示分野におけるリーダーシップを歓迎する旨、述べられた。
水野理事水野PRI理事、GPIF理事兼CIO
進藤会長進藤日本製鉄会長、経団連副会長
チャールズ・O・ホリデイチャールズ・O・ホリデイ
ロイヤル・ダッチ・シェル 会長
ドンブロウスキス欧州委員会副委員長ドンブロウスキス欧州委員会副委員長のビデオメッセージ

TCFDサミット結果概要 ④

  • パネル1【エンゲージメントの重要性】では、ダイベストメントは排出する場所が変わるのみであり、投資家はエンゲージメントを通じて企業の変化を後押しすることが重要、「グリーン投資ガイダンス」は企業と投資家の対話のためのツールとなる等の議論が行われた。
Panel
Discussion 1
(エンゲージメント
の重要性)
モデレーター
水野 弘道(国連責任投資原則協会(PRI)理事、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事兼CIO)
パネリスト
マーティン・スカンケ(国連責任投資原則協会(PRI)議長)
ゴードン・J・ファイフ(British Columbia Investment Management Corporation(BCI)CEO兼CIO)
ユ・ベン・メン(カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)最高投資責任者(CIO))
パク・ユギョン(APGアセットマネジメント 責任投資・ガバナンスチーム アジア太平洋担当代表)
マーク・ルイス(BNPパリバ・アセットマネジメント サステナビリティ・リサーチ・グローバル・ヘッド)
ヘレ・クリストファーセン(トタル戦略イノベーション担当プレジデント、執行委員会メンバー)

パネルディスカッション1の様子
パネルディスカッション1の様子

ヘレ・クリストファーセンヘレ・クリストファーセン
Total(仏)
  • 勝者になるか、敗者になるか、エンゲージメントこそが鍵。グリーン投資ガイダンスではまさにその点が強調
  • 「濃い緑」でなくても、既存の低炭素ソリューションを見落としてはいけない。最近、エネルギー会社がエネルギー転換債等を発行する動きは、排出削減に貢献する。「濃い緑」だけでなく、このような取組が促進されるべき。
ゴードン・J・ファイフゴードン・J・ファイフ
BCI(加)
  • エンゲージメントには変化を後押して影響力を行使する機会がある。ダイベストメントは排出する場所が変わるのみ
  • ESGチームだけでなく、投資判断するポートフォリオマネージャーが企業に行き、直接話すことが重要
  • グリーン投資ガイダンス等、日本では議論のための枠組ができ、対話が始まろうとしている。
ユ・ベン・メンユ・ベン・メン
CalPERS CIO
  • ダイベストメントは他のポートフォリオで排出が生じるとともに、分散投資を制限するため、受託者責任に反する
  • 発言権を持って声を上げるエンゲージメントの方がダイベストメントより好ましいアプローチである。
  • 情報は一番の触媒であり、TCFDは重要。また、リスクをプライシングするための理論的枠組みが短中長期に必要
パク・ユギョンパク・ユギョン
APG AM(蘭)
  • ダイベストメントは会社の目を覚まさせる唯一の手段である場合にのみ行う。責任ある投資家としてあらゆる手段をとらなければならない。
  • 外部コンサルを使った「美しい」だけの開示は誤った方向に投資家を誘導する。誠実な開示から始めるべき。
マーティン・スカンケマーティン・スカンケ
PRI 議長
  • ダイベストメントは分かりやすい象徴的なツールである一方、エンゲージメントは時間や努力、体力が必要。
  • 投資家は、エンゲージメントの努力の透明性を高めるべき。エンゲージメントの透明性を高め、長期的なツールとしての信頼性を高めることで、ダイベストメントへの圧力を減じることができる。
マーク・ルイスマーク・ルイス
BNP PARIBAS AM
  • エンゲージメントによって、投資先企業の経営を、特に気候変動について望む行き先に導いていきたい。
  • ポートフォリオマネージャーがESGチームから引き受けて取り組むことが課題。

TCFDサミット結果概要 ⑤

  • パネル2【オポチュニティ評価の重要性】では、事業会社より気候変動への取組を開示したことのポジティブな評価を紹介。指数・運用会社より機会を評価するための指標や商品、フレームワークの開発を進めているが、データ量の不足は依然ある(特に中小型株)との発言に対し、SASBより問題はデータの質・一貫性がないことであり、評価機関のモデルも一貫させる必要がある、等の議論が行われた。
  • パネル3【アジアにおける開示の課題と今後の展望】では、今後急激な成長と莫大なグリーン投資需要が想定されるアジアにおいてTCFD提言に沿った情報開示を進める上での課題等について議論が行われた。排出量の多い産業部門も存在しエネルギーアクセス等の課題もあるアジアにおいて公正な移行と適切な情報開示を両立することが必要、企業や資本がどのように進むべきかを指南するトランジッション・タクソノミーのようなツールを作ることも考えられる等との発言があった。
Video message ヴァルディス・ドンブロウスキス(欧州委員会副委員長)
Panel
Discussion 2
(オポチュニティ評価
の重要性)
モデレーター
マルディ・マクブライアン(気候変動開示基準委員会(CDSB)マネジングディレクター)
パネリスト
十倉 雅和(住友化学株式会社 代表取締役 会長)
ピエール・ブレバー(シェブロン 副社長兼最高財務責任者)
ニコラス・エイキンズ(アメリカン・エレクトリック・パワー社長、会長兼CEO)
ワカス・サマド(FTSE Russell CEO、LSEG情報サービス事業部門グループディレクター)
ベア・ペティット(MSCI 社長)
スタニスラス・ポティエ(アムンディ CRIO(最高責任投資責任者))
マデレイン・アントンチッチ(持続可能性会計基準審議会(SASB)CEO)
Panel
Discussion 3
(アジアにおける
開示の課題と
今後の展望)
モデレーター
レベッカ・ミクラライト(気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC) ディレクター)
パネリスト
池田 賢志(金融庁 チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー)
エミリー・チュー(マニュライフ・インベストメント・マネジメント ESG グローバル・ヘッド)
リチャード・パン(ChinaAMC マネジングディレクター兼QFII投資国際事業担当ヘッド)
ゲオルク・ケル(アラベスク 会長)
マシュー・アーノルド(J.P.モルガン サステナブル・ファイナンス担当グローバルヘッド)
Closing Remark ピーター・バッカー(WBCSDプレジデント兼CEO)

パネルディスカッション2の様子
パネルディスカッション2の様子

パネルディスカッション3の様子
パネルディスカッション3の様子

TCFDサミット結果概要 ⑥

  • クロージング・リマークでは、共催者であるWBCSDのピーター・バッカー 会長兼CEOより、TCFDサミット総括(Key Takeaways)が述べられた。
ピーター・バッカー

TCFDサミット総括(抜粋)

  • 「環境と成長の好循環」を加速するためには、企業価値を向上させ、投資リターンを増やす資金のポジティブな流れを生み出すことを可能とする建設的なメカニズムが必要です。本日、TCFDコンソーシアムが公表した「グリーン投資ガイダンス」は、こうした企業と投資家の対話を促進する有用なツールとなるでしょう。
  • 我々は、気候変動リスクとその評価の方法だけでなく、ネットゼロ社会への移行がビジネスにイノベーションのチャネルを提供するという事業機会についても、明確に理解することによって、より持続可能な資金供給のシステムへの移行を進める必要があります。
  • 環境と成長の好循環の実現を加速させるためには、投資の引き揚げ(ダイベストメント)には手法として限界があり、むしろ建設的な対話(エンゲージメント)の方が、エネルギー転換に向けた資金のポジティブな流れをより生み出す上で、より強力なツールである、という議論が行われました。
  • 急激な成長、インフラ投資、増加するグリーン投資需要が想定されるアジアにおいて、TCFD提言に沿った気候関連開示を促進することが重要です。アジアの継続的な経済発展を促進し、低炭素社会への円滑な移行を後押しするためには、この地域で実用的なアプローチを採用することが重要です。同様に、「50段階の色合いのグリーン」(注)を示していくことをも念頭に置きつつ、この地域での移行に貢献しうる低炭素技術群を提示することが重要です。
  • また、我々は、TCFDを支持し、その提言の履行に向けた取組に集中するためにも、世界の産業界、金融界、政府、規制当局、国際機関等を含む幅広い利害関係者をまとめるための継続的な努力が必要だと明確に呼びかけました。これは、地球規模での「環境と成長の好循環」を加速させる重要な触媒になります。
  • そのため、我々としては、来年東京で再びTCFDサミットを開催します。そしてTCFDコミュニティが作り出す更なる進展を聞く機会を楽しみにしています。我々はまた、日本のTCFDコンソーシアムが、アジアを含む世界中からベストプラクティスを収集し普及させることを通じて私達の取組を引き続き後押しすることを期待します。
  • 最後に、今日の議論から、TCFDが低炭素経済への移行を導く上で重要な役割を果たしていることが十分に明確であることを付け加えたいと思います。したがって、TCFDの営みが継続され、重要な議論と学びの機会のためのプラットフォームと推進力を提供し続けることが最も重要です。

(注)英語では、“50 shades of green”。グリーンであるか否かの二進法的な分類ではなく、進歩幅や移行の観点をも加味した評価軸の比喩として用いられた言葉。